医療労務コンサルタント研修の中にも出てきましたが、旧県立奈良病院の当直問題。
大阪高裁でも一審同様の判決となったようです。

この裁判では、割増賃金が争点ではありますが、もう一つの真相についても究明すべきではなかったかという問題がありました。

それは、この期間中、同病院の産婦人科では、この訴えを起こした2名のDr.を含む5名の医師が勤務していましたが、当直の医師1名では、急患などの対応ができないため、宿日直勤務以外に自主的に「宅直」当番を決めていたとのこと。

 「宅直」当番の医師は、宿日直の医師だけでは対応が困難な場合、病院に駆けつけ宿日直医師に協力し診療を行っており、この「宅直勤務」についても、割増賃金の対象となる労働時間に値すると主張していたそうです。
 
しかし、宅直当番は自主的な取り決めにすぎず、病院にも定めがないため指示していたと示す証拠もない。
また、宅直の医師は自宅におり、特に待機場所もきめられていないことから、指揮命令下にあったとは言えず、割増賃金を請求できる労働時間とはいえないとして、この部分については無しになっています。

黙視の指示があった「宅直」。オンコール手当などが払われていたのかも不明ですが、医療機関の労務管理問題に、また大きな痕が残りましたね。 

以下引用です。

県立奈良病院(現奈良県総合医療センター)の産婦人科医の当直時間帯すべてが「労働時間」に当たるかが問われた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は19日、一審奈良地裁と同様に労働時間と判断し、病院側に未払いの割増賃金など計約1280万円の支払いを命じた。

 病院側は、患者の急変など業務に携わる時間だけを割増賃金の対象としてきたが、水上敏裁判長は判決理由で「当直の全時間を通じ病院長の指揮命令下にあり、十分な休息を確保する見込みはない」と退けた。

 訴えていたのは産科医2人。2006−07年、当直勤務をそれぞれ1200時間以上こなした。

 昨年9月の一審判決は奈良県に約1900万円の支払いを命じたが、控訴審は「医師数の増員など、病院側も労働密度の低下にある程度努力している」として、付加金(制裁金)を減額した。訴訟を引き継いだ県立病院機構は「判決を精査し対応する。今後も医師の処遇改善に取り組む」とコメントした。 

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